2012年 5月号
A・LA・CARTEとは、フランス語で「メニューから好みによって注文する料理」という意味ですが、今月は久しぶりに
当所が厳選した話題を取り上げてご紹介したいと思います。
● 税 務
― 消費税、課税売上割合に関する非課税と不課税の違い ―
課税売上割合は、分母を総売上高(課税取引、非課税取引及び免税取引の合計額)とし、分子を課税売上高
(課税取引及び免税取引の合計額)としたときの割合です。そして、課税売上割合の値は、控除可能な仕入税
額に関し、個別対応方式や一括比例配分方式の計算において使用されます。
非課税取引は、原則として分母にだけ算入しますが、不課税取引は、そもそも消費税の適用の対象にならな
い取引ですので、分母にも分子にも算入しません。なお、不課税取引には、国外取引、対価を得て行うことに当
たらない寄附や単なる贈与、出資に対する配当などが該当し、非課税取引には土地、有価証券、商品券などの
譲渡、預貯金の利子や社会保険医療などが該当します。
― 帳簿書類等の保存期間 ―
法人税法施行規則により、法人は帳簿および書類をその事業年度の確定申告書の提出期限から7年間保存
しなければならないことになっています。
「帳簿」とは、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳
など、取引を記録したものを、「書類」とは、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書など、
取引等に関して作成又は受領したものを指します。
なお、会社法の規定では、株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関
する重要な資料を保存しなければならないこととされています。また、平成13年度税制改正で欠損金繰越控除
の期間が9年間に延長され、その間の帳簿保存が適用要件とされています。
― ゴルフ会員権の評価 ―
ゴルフ会員権(以下、会員権)について、相続税や贈与税を計算するときの評価方法は次のとおりです。
1 取引相場のある会員権
課税時期の取引価格の70%に相当する金額によって評価します。なお、取引価格に含まれない預託
金等があるときは、次の金額との合計額によって評価します。
(1) 課税期間において直ちに返還を受けることができる預託金等
ゴルフクラブの規約などによって、課税期間に返還を受けることができる金額
(2) 課税期間から一定期間の経過後に返還を受けることができる預託金等ゴルフクラブの
規約などによって返還を受けることができる複利現価の額(この額は、課税期間から
返還を受けることができる日までの期間に応ずる基準年利率により計算される)
2 取引相場のない会員権
(1) 株主でなければゴルフクラブの会員となれない会員権
財産評価基本通達によって評価した、課税期間における株式の価額に相当する金額
(2) 株主であり、かつ、預託金等を預託しなければゴルフクラブの会員となれない会員権その会員権につ
いて、株式と預託金等に区分にして、それぞれ次の金額の合計額によって評価した金額
イ 株式の価額 2の(1)の方法を適用して計算した金額
ロ 預託金等 1の(1)又は(2)の方法を適用して計算した金額
(3) 預託金等を預託しなければゴルフクラブの会員となれない会員権
1の(1)又は(2)の方法を適用して計算した金額
● 総 合
― キャッシュ・フォー・ワーク ―
被災地などで被災者自身を復興のための事業に雇用し、対価を支払うことで被災地の円滑な経済復興と、
被災者の自立支援につなげる手法を、「キャッシュ・フォー・ワーク」といいます。家や職場を失った被災者が、
収入と新たなやりがいを得る効果的な支援策といわれています。
昨年3月の東日本大震災では、津波により561万平方キロメートルが浸水し、宮城県・福島県・岩手県をは
じめとする多くの地域で、壊滅的な被害を受けました。沿岸地域には、住居だけではなく多くの水産業の施設
がありました。そのため家や家族だけでなく職場を失った人も数多くいます。
また、被災地では、工場を片付けられず事業を再開できない事業所や、仮設住宅が遠隔地にあり食料品な
どの買い物ができない高齢者など、復興のために多くの人手が必要とされています。
そこで自治体やNPO法人がキャッシュ・フォー・ワークプロジェクトを開始し、がれき撤去や食品配達サービ
ス、仮設住宅での世話役など、さまざまな仕事が提供されています。
今まで大規模な災害が発生した後は復興事業による経済成長が期待できました。それは、これまでの災害
は被災地の周囲はほとんど被災しておらず、周囲から多くの物資が調達できたからです。
しかし、今回の大地震は100年に一度といわれるほど甚大であり、従来の復興のやり方は通用しないという
見方もあります。また、日本の建設市場の規模は、阪神・淡路大震災当時よりもかなり縮小しており、復興に
必要な資材や人員が充足するか、疑問視されています。
これまでとは異なる考え方で復興の道筋を考えることが重要であり、キャッシュ・フォー・ワークもその一つと
いえるでしょう。