2012年 8月号
● 税 務 ― 確認したい!! 平成24年から適用される税制改正 ―
最近の税制改正は、成立時期が様々な上に適用時期も成立から離れているものもあり見落とし易くなって
います。
そこで今回は、実務的観点から法改正等に伴い平成24年に適用が開始される主な制度を整理してみます。
1 平成24年1月から適用
(1) 特定居住用財産の買換え特例
所有期間が10年を超える特定の居住用財産について買換え・交換の特例が適用できる譲渡資産が、
1億5千万円以下のものに引き下げられました。
(2) 特定事業用資産の買換え特例
所有期間が10年を超える事業用の土地・建物等から国内にある土地・建物、機械・装置等への買換え
を行った場合の買換え資産の対象となる土地について範囲が制限されました。
(3) 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置
若年世代への資産の早期移転や省エネルギー・耐震性を備えた良質な住宅ストック形成する観点から、
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税限度額が、表1のとおり見直されました。
表1 非課税限度額 | ||
①省エネ・耐震住宅 | ②左記①以外の住宅 | |
平成24年中 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成25年中 | 1,200万円 | 700万円 |
平成26年中 | 1,000万円 | 500万円 |
額は、①省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅(省エネ・耐震住宅)
の場合は1,500万円、②それ以外の住宅の場合は1,000万円となります。
2 平成24年4月以後取得分から適用
◎ 減価償却制度
減価償却資産の定率法の償却率が、定額法の償却率の2倍に引き下げられました。
3 平成24年4月27日以後契約分から適用
◎ 法人契約のガン保険等の保険料の取扱い
法人契約の終身保障タイプのガン保険については、通達改正により前払い期間を経過するまでの期間
にあっては、各年の支払保険料の額のうち2分の1に相当する金額を前払金等として資産に計上し、残額
は損金に算入される等の見直しが行われています。
※前払期間…加入時の年齢から105歳までの期間を計算上の保険期間とし、当該保険期間開始の時か
ら当該保険期間の50%に相当する期間をいいます。
4 平成24年4月1日以後に開始する事業年度からの適用
(1) 貸倒引当金
大企業および大企業の100%子会社については、適用が除外されています。
(2) 法人税率
諸外国に比べて高い水準にある法人実効税率を見直すため、課税ベースの拡大等により財源を確保し
つつ、法人税の税率が表2のように引下げられました。
表2 法人税率の改正 | ||||||
改正前 | 改正後 | 復興増税期間 | ||||
適用時期 | ― |
平成24年4月1日 以後開始事業年度 |
平成24年4月1日~ 平成27年3月31日に 開始する3事業年度 |
|||
資本金1億円 超の普通法人 |
一律30% 実行税率 40.69%. |
一律25.5% 実行税率 35.64% |
一律28.05% 実行税率 38.01% |
|||
資本金1億円 以下の 普通法人 |
年 800 万円 超 |
年 800 万円 以下 |
年 800 万円 超 |
年 800 万円 以下 |
年 800 万円 超 |
年 800 万円 以下 |
30.0% |
本則 22.0% 特例 18.0% |
25.5% |
本則 19.0% 特例 15.0% |
28.05% |
本則 20.9% 特例 16.5% |
(3) 欠損金の繰越控除限度額
中小法人等を除き、繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の金額の80%相当額が繰越控除限度
となりました。
(4) 課税売上高5億円超の事業者の仕入税額控除
消費税の課税期間の課税売上高が5億円を超える事業者は、たとえ課税売上割合が95%以上であって
も、個別対応方式か一括比例配分方式により、その課税期間の仕入税額控除額の計算を行うことになりま
した。
(改正の影響)
事業者は、非課税売上となる銀行利息収入が通常あるため、課税仕入等の区分を厳密に行う必要があり
ます。ほとんどのケースで、個別対応方式を選択した方が有利になると思われますが、この方式の場合、
「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」、「課税資産の譲渡
等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分します。
非課税売上が銀行利息収入のみであつた場合でも、全体の業務を行う部門で生ずる管理費等は、「課税
資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」と考えられるので、注意が必要です。
5 平成24年7月1日以後適用
◎源泉徴収ら係る所得税の納期の特例
7月から12月までの間に支払った給与等及び退職手当等につき徴収した所得税の納期限が翌年1月20
日(改正前1月10日)となりました。
6 平成24年分より適用
◎生命保険料控除
生命保険料控除が改組され、①一般生命保険料控除、②個人年金保険料控除、③介護医療保険料控除
の3本立てとなりました。
7 平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金額からの適用
◎繰越欠損金の繰越期間
繰越欠損金の繰越控除期間が7年から9年となっています。
なお、その欠損金額が生じた事業年度の帳簿書類の保存が適用要件とされています。