2013年 1月号
平成24年度税制改正により、特定の役員に対する退職手当等に係る退職所
得の金額の計算が改正され、平成25年1月1日から適用されます。
そこで今回は、特定役員退職手当等に関するポイントをQ&A方式で整理
してみます。
1 改正の概要
退職所得は、勤続年数に応じた退職所得控除額を控除した後の金額の2分
の1が課税対象とされていますが、会社役員等で、役員等の勤続期間が5年
以下の場合に支払を受けた退職金については、2分の1ではなく、退職所得
控除後の金額の全額が課税対象とされることとなりました。
【改正前】
〔(退職金の収入金額-退職所得控除)÷2〕×税率=税額
【改正後】
(退職金の収入金額-退職所得控除)×税率=税額
この対象となる会社役員等とは、次の人をいいます。
①法人税法上の役員、②国会議員及び地方議会議員、③国家公務員及び地方
公務員
また、特定役員とは、役員等勤続年数が5年以下の人をいいます。
2 Q&A
Q1 役員等勤続年数が5年以下かどうかはどのように判定するのですか。
A 役員等勤続年数は、退職手当等に係る勤続期間のうち、役員等として
勤務した期間により計算した年数(役員等として勤務した期間に1年未
満の端数がある場合は、これを1年にに切り上げ)とされています。
たとえば、入社後使用人として20年間、役員として3年間、通算23年
間勤務して退職した場合、役員等勤続年数期間は5年以下ですので、特定
役員に該当することになります。
ただし、2分の1課税の対象外となるのは、特定役員に該当する3年間
だけであって、使用人として勤務して20年間に対する退職金については
2分の1課税の対象になります(設例参照)。
Q2 同一年中に、異なる会社からそれぞれ退職手当等の支給を受ける場合、
特定役員退職手当等の判定はどのように行うのでしょうか。
A 同一年中に、異なる会社からそれぞれ退職手当等の支給を受ける場合は
、それぞれの退職手当等ごとに、役員等勤続年数が5年以下かどうかによ
り、特定役員退職手当等に該当するかどうかを判定します。
Q3 退職所得控除額の計算方法は、一般退職手当等と特定役員退職手当等と
特定役員退職手当等とで異なりますか。
A 支払を受ける退職手当等が、一般退職手当等であっても特定役員退職手
当等であっても、退職所得控除額の計算方法は同じです。
Q4 取締役を4年間勤めた後、引き続き監査役として3年間勤めた者が退職
することになり、役員退職金を支給します。この役員退職金は、役員期間
(7年間)に対するものですから、特定役員退職手当等に該当しない扱い
で構いませんか。
A この役員退職金は、役員として勤務した通算7年間に対応するものです
から、特定役員退職手当等に該当することになります。
【設例】
勤続年数23年
使用人として勤務した期間20年
役員として勤務した期間3年
役員退職金1,000万円 使用人退職金2,500万円
(退職所得控除額)
勤続年数が20年以下の場合 : 40万円×勤続年数
勤続年数が20年超の場合 : 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
(源泉所得税の計算)
① 特定役員退職所得控除額の計算
40万円×3年[特定役員等勤続年数]=120万円
40万円に特定役員等勤続年数3年を乗じた120万円が特定役員退職所得控除
額となります。
② 一般退職所得控除額の計算
〔800万円+70万円×(23年-20年)〕-120万円=890万円
勤続年数23年に対応する退職所得控除額(勤続年数20年以下の部分は年
40万円、20年を超える部分は年70万円)から上記①で算出した特定役員
退職所得控除額(120万円)を差し引いた残額が、一般退職所得控除額と
なります。
③ 退職所得の金額の計算
(1000万円-120万円)+〔(2500万円-890万円)×1/2〕=1,685万円
④ 源泉徴収税額(所得税及び復興特別税)の計算
(1,685万円×33%-1,536万円)×102.1%(注)=
4,109,014.5円⇒4,109,014円(1円未満端数切捨て)
(注)1 平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生ずる所得につ
いて源泉所得税を徴収する際、復興特別税を併せて徴収します。