2013年 4月号
● 税 務 ―平成25年度 税制改正(案)のポイント―
平成25年度の税制改正は、消費税関連法、三党合意を尊重しながら、民間投資や雇用を
喚起し持続的成長を可能とする成長戦略に基づく政策減税を盛り込んだものとなっていま
す。
以下、主な改正項目のポイントを整理してみます。
《改正項目のタイムスケジュール》
主要項目の適用時期は、下表のようになります。なお、前年度以前の改正で適用時期が
今年度以前の改正で適用時期が今年度以降となる項目も記載しています。
Ⅰ 個人所得課税
1 所得税の最高税率の見直し
現行の税率構造に加え、課税所得4,000万円超について、45%の税率が設け
られます。
2 住宅ローン減税の拡充
住宅取得などをして平成26年から29年までの間に居住した場合の住宅ローン控除に
ついては、図表1のように制度が拡大されます。
Ⅱ 資産課税
1 相続税・贈与税の見直し
(1) 相続税の基礎控除及び税率の見直し
相続税の課税ベース・税率構造が、図表2のように見直されます。
(2) 小規模宅地等の見直し
特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積が330㎡(現行240㎡)まで
の部分に拡充されます。
(3) 贈与税の税率の見直し
20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産に対する贈与税率が見直され、
それ以外の場合よりも軽減されます。
(4) 相続時精算課税制度の適用要件の見直し
① 受贈者の範囲に20歳以上である孫が追加されます。
② 贈与者の年齢要件が60歳以上(現行65歳以上)に引き下げられます。
改正タイムスケジュール 平成
25年4
月○ 教育資金贈与の一括非課税措置の創設 ○ 給与等を増加させた場合の所得拡大促進税制の創設 ○ 生産等設備投資促進税制の創設 ○ 中小企業の交際費等年800万円まで全額損金算入 平成
26年1
月● 株の配当・売買益課税(10%→20%) ○ 非課税口座内の少額上場株式等の配当・譲渡所得の非課税措置(100万円まで) 4
月○ 住宅ローン減税の拡充(最大4千万円に拡大) ● 消費税率の引上げ(5%→8%) ○ 自動車取得税と自動車重量税の減税 平成
27年1
月● 相続税の基礎控除を現行の6割に縮小 ● 相続税の最高税率を5%引上げ(55%に) ● 所得税の最高税率を5%引上げ(45%に) △ 事業承継税制の抜本的見直し ○ 小規模宅地等の相続税の特例を拡充 10
月● 消費税率の引上げ(8%→10%) ○ 自動車取得税の廃止(26年度改正で法制化) ○=減税 ●=増税 △=どちらともいえない
■相続税の基礎控除 . 現行 改正案 定額控除 5,000万円 3,000円 法定相続人
比例控除1,000万円に
法定相続人数
を乗じた金額600万円に法
定相続人数を
乗じた金額
■相続税の税率構造 .現行 改正案 1,000万円以下の金額 10% 同左 3,000万円 〃 15% 〃 5,000万円 〃 20% 〃 1億円 〃 30% 〃 3億円 〃 40% 2億円以下の金額 40% 3億円 〃 45% 3億円超の金額 50% 6億円 〃 50% 6億円超の金額 55%
2 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
受贈者(30歳未満の者に限る)の教育資金に充てるためにその直系尊属が金銭
などを拠出し、金融機関に信託などした場合には、信託受益権の価額又は拠出され
た金銭等の額のうち受贈者1人につき1,500万円(学校以外に支払われる金銭は
500万円を限度)までに相当する部分については、平成25年4月1日から27年12月31
日までに拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととされます。
(注) 教育資金とは文部科学大臣が定める次の金銭とされます。
①学校などに支払われる入学金その他の金銭②学校など以外の者に支払われる
金銭のうち一定のもの
3 事業承継税制の抜本的見直し
先代経営者から後継者が非上場株式等を受け継いだ場合の相続税・贈与税の納税
猶予制度について、納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件にある「経産大臣の認
定の有効期間(5年間)において継続して8割以上の雇用を維持」を、「5年間の
平均で8割以上の雇用を維持」に緩和する等の見直しが行われます。
Ⅲ 法人課税
1 生産等設備投資促進税制の創設
生産等設備への投資額を前年比1割を超えて増加させた場合に、新たに取得等し
た機械・装置の取得価額の30%の特別償却または3%の税額控除を認める制度が
創設され、平成25年4月1日から27年3月31日までの間に開始する事業年度に取得した
生産等設備に適用されます。
2 所得拡大促進税制の創設
平成25年4月1日から28年3月31日に始まる事業年度で、国内の雇用者への給与を5
%以上増やして支給した場合、その給与支給増加額の10%が税額控除できます。
ただし、控除税額は当期の法人税額の10%(中小企業は20%)が限度です。
3 交際費課税の見直し
交際費等の損金不算入制度で、中小法人に係る損金算入の特例として、定額控除
限度額を800万円(現行600万円)に引き上げ、定額控除限度額までの金額の
損金不算入措置(現行10%)が廃止されます。