2014年 4月号
● 税 務 ― 消費税経過措置Q&A 4月1日前後の適用誤りに注意!! ―
平成26年4月から消費税率が5%から8%に引き上げらていますが、施行日(4月1日)前後
の取引に係る税率の適用については、誤り易い点も多いので、Q&A方式でポイントを整理して
みます。
施行日前後の取引に係る税率の適用関係
(施行日前後の適用関係の原則)
Q1 施行日前後の取引に係る消費税率の適用関係を教えて下さい。
A1 8%の税率は、施行日以後に国内で事業者が行う資産の譲渡等並びに施行日以後に国内で
事業者が行う課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨物(以下、「課税仕入れ等」
といいます)に係る消費税に適用し、施行日前に国内で事業者が行った資産の譲渡等及び
課税仕入れ等には5%の税率が適用されます。
したがって、施行日の前日(3月31日)までに締結した契約に基づき行われる資産の譲
渡等及び課税仕入れ等であっても、施行日以後に行われるものは、経過措置が適用される場
合を除き、その資産の譲渡等及び課税仕入れ等には8%の税率が適用されることになります。
(施行日の前日までに購入した在庫品)
Q2 施行日の前日(3月31日)までに仕入れた商品を施行日以後に販売した場合は、消費税
率の適用関係はどのようになりますか。
A2 税率8%は、経過措置が適用される場合を除き、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び
課税仕入れ等について適用されます。
したがって、施行日の前日までに仕入れた商品を施行日以後に販売する場合には、8%の
税率が適用されますが、商品の仕入れは、施行日の前日までに行われたものですから、課税
仕入れに係る消費税額は税率5%で計算することになります。
(施行日を含む1年間の役務提供を行う場合)
Q3 3月1日に、同日から1年間の機械の保守契約を締結するとともに、1年分の保守料を受
領した場合、消費税率の適用関係はどのようになりますか。
A3 役務の提供に係る資産の譲渡等の時期は、物の引渡しを要するものにあっては、「その目
的物の全部を完成して引渡した日」、物の引渡しを要しないものにあっては、「その約した
役務の全部を完了した日」とされています。
保守は、物の引渡しを要しないので、資産の譲渡等の時期は役務の全部を完了する日であ
る平成27年2月28日となります。
したがって、施行日以後に行う課税資産の譲渡等となりますから、原則として新税率が適
用されます。ただし、契約又は慣行により、1年分の対価を収受することとしており、事業
者が、継続してその対価を収受した時に収益を計上している場合は、施行日の前日までに収
益に計上したものについては旧税率が適用されます。
(施行日前後の返品等の取扱い)
Q4 当月中に返品を受けた商品は、前月中の販売に対応するものとして処理しています。4月
中の返品は、3月中の販売に対応するものとして処理することになりますが、5%の税率で
売上げに係る対価の返還等に係る消費税額の計算を行って差し支えないですか。
A4 施行日前に販売した商品が、施行日以後に返品され、対価の返還等をした場合には、5%
の税率で売上げに係る対価の返還等に係る消費税額の計算をすることとされています。
したがって、質問のように合理的な方法により継続して返品等の処理を行っている場合は、
事業者が継続している方法により、売上げに係る対価の返還等に係る消費税額を計算しても
差し支えありません。
なお、このように取り扱う場合には、取引当事者間において取り交わす請求書等に適用税率
を明記し、取引の相手方はその請求書等に記載された税率により仕入れに係る対価の返還等に
係る消費税額を計算することとなります。
参考 主な経過措置の概要
次に掲げるものには、8%の税率引き上げ後においても改正前の税率(5%)が適用されます。
経過措置の内容
① 旅客運賃等
平成26年4月1日以後に行う旅客運送の対価や映画・演劇を催す場所、競馬場、競輪場、
美術館、遊園地等への入場料金等のうち、平成26年4月1日前に領収しているもの
② 電気料金等
継続供給契約に基づき、平成26年4月1日前から継続して供給している電気、ガス、水道、
電話に係る料金等で、平成26年4月1日から平成26年4月30日までの間に料金の支払いを
受ける権利が確定するもの
③ 請負工事等
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した工事(製造を含みます)に
係る請負契約(一定の要件に該当する測量、設計及びソフトウェアの開発等に係る請負契約を含
みます)に基づき、平成26年4月1日以後に課税資産の譲渡等を行う場合における、その課税
資産の譲渡等
④ 資産の貸付け
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に
基づき、平成26年4月1日前から同日以後引き続き貸付けを行っている場合(一定の要件に該
当するものに限ります)における、平成26年4月1日以後に行うその資産の貸付け
⑤ 指定役務の提供
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した役務の提供に係る契約で、
その契約の性質上、役務の提供の時期をあらかじめ定めることができないもので、その役務の提
供に先立って対価の全部又は一部が分割で支払われる契約(割賦販売法に規定する前払式特定取
引に係る契約のうち、指定役務の提供(※)に係るものをいいます)に基づき、平成26年4月1
日以後に、その役務の提供を行う場合において、その契約の内容が一定の要件に該当する役務の
提供
※ 「指定役務の提供」とは、冠婚葬祭のための施設の提供その他の便宜の提供に係る役務の提
供をいいます。