事務所便り

2014年 9月号

● 税  務 ― 消費税「簡易課税制度」みなし仕入れ率見直しのポイント

   ―はじめに―
     平成26年度税制改正では、消費税の簡易課税制度のみなし仕入率が見直されました。
     今回は、この見直しのポイントについて見ていきます。

  簡易課税制度の変遷
   簡易課税制度は、平成元年の消費税導入時より、中小企業者の事務負担に配慮して、事務の簡素化を
  図るために、事業者の選択により適用できる制度として採用されてきました。
   具体的には、課税売上げに対応する課税し入れについて、みなし仕入率を用いて計算することを認め
  る制度です。
   このみなし仕入率については、事業の種類ごとに異なるみなし仕入率が適用されています。
   消費税が導入された当初の簡易課税制度では、みなし仕入率は第一種(卸売業)と第二種(その他の
  事業)の二種類のみの大雑把なものでした。また、基準期間の課税売上高が5億円以下の事業者が適用
  可能な制度とされ、新しい制度である消費税の定着に大きな貢献を果たしたと考えられています。
   その後、簡易課税制度は、事業者にとって益税となるとの批判を浴びたことから、図表1のような幾
  度の改正を経て、現在は、基準期間の課税売上高が5千万円以下の事業者のみが適用可能な制度となり、
  みなし仕入れ率についても第一種の90%から今回、第六種の40%までと6種類に細分化されてきて
  います。
   なお、現状の簡易課税制度については、事業区分の判定が難しくなっていますが、消費税10%時に
  軽減税率となることから、簡易な利用ではなくなるとの声もあります。
 

  改正の背景  
   会計検査院の報告書によれば、全ての事業区分で、みなし仕入率が実際の課税仕入率を上回っており、
  中でも実際の課税仕入率とみなし仕入率の開差が大きいものとして、金融業及び保険業と不動産業が指
  摘を受けました。


  改正の内容 
   平成26年度税制改正では、従来の5種類の事業区分から、6種類の事業区分に変更の上、平成27
  年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
   具体的には、図表2のように金融業及び保険業が「第四種事業」から「第五種事業」へ変更となり、
  不動産業が「第五種事業」から新設された「第六種事業」となりました。


  みなし仕入率改正の経過措置 
   みなし仕入率の見直しは、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から適用されますが、経過措
  置が設けられており、平成26年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した事業
  者は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間であっても、その届出書に記載した適用開始課税期
  間の初日から2年を経過する日までの間に開始する課税期間については、改正前のみなし仕入率が適用
  されることになっています。
   具体例を示すと図表3のようになります。

表1 みなし仕入率の変遷
  平成元年4月~ 平成3年10月~ 平成9年4月~ 平成16年4月~ 平成27年4月~
事業区分 第一種(90%)
第二種(80%)
第一種(90%)
第二種(80%)
第三種(70%)
第四種(60%)
第一種(90%)
第二種(80%)
第三種(70%)
第四種(60%)
第五種(50%)
第一種(90%)
第二種(80%)
第三種(70%)
第四種(60%)
第五種(50%)
第一種(90%)
第二種(80%)
第三種(70%)
第四種(60%)
第五種(50%)
第六種(40%)
課税売上高 5億円以下 4億円以下 2億円以下 5,000万円以下 同左
図表2 業種区分の変更
改正前 改正後
第一種事業(90%)
卸売業
第一種事業(90%)
卸売業
第二種事業(80%)
小売業
第二種事業(80%)
小売業
第三種事業(70%)
農林水産業
鉱業
建設業
製造業 等
第三種事業(70%)
農林水産業
鉱業
建設業
製造業 等
第四種事業(60%)
料理飲食業等
金融業及び保険業
第四種事業(60%)
料理飲食業等
第五種事業(50%)
運輸・通信業
サービス業
不動産業
第五種事業(50%)
運輸・通信業
サービス業
金融業及び保険業
  第六種事業(40%)
不動産業

図表3 不動産業(第六業種)に該当する事業を営む者に係る経過措置の適用関係(例)【3月31日決算法人の適用例】
「消費税簡易課
 税制度選択届
 出書」の提出
 年月日
課税期間
自25.4.  1
至26.3.31
自26.4.  1
至27.3.31
自27.4.  1
至28.3.31
自28.4.  1
至29.3.31
自29.4.  1
至30.3.31
①25.3.31以前 第五種で計算 第五種で計算 第六種で計算 第六種で計算 第六種で計算
②26.3.27 (一般課税) 第五種で計算 第五種で計算 第六種で計算 第六種で計算
③26.9.26 (一般課税) (一般課税) 第五種で計算 第五種で計算 第六種で計算
④26.10.6 (一般課税) (一般課税) 第六種で計算 第六種で計算 第六種で計算
       

所長 堀 裕彦 中小企業庁“ちいさな企業

税務・会計の無料相談はこちら

※どんな些細なことでもご相談ください。

  • 事務所便り
  • 雑学ノート
  • 講演・執筆活動
  • セミナー案内
  • 所長のフォトブログ
  • Facebook
中小企業庁 経営革新等支援機関 “経営サポート
中小企業庁 “ちいさな企業”未来会議サポーター をしております。
第1期 登録アドバイザー