事務所便り

2013年 10月号


   ● 税  務
 ― で見る 平成25年度改正相続税

     相続税については、バブル期に地価が急騰し、相続税負担が過重になったことから、その負
    担軽減を目的に相続税の基礎控除を引上げ、税率構造の緩和等をしてきました。
     しかし、その後の地価下落にもかかわらず、相続税の基礎控除の引下げ行われなかったため
    課税対象割合がかつてないほど下がったことを受けて、平成25年度税制改正では、「資産再
    配分機能の回復」を図ることを目的に、相続税法の改正が行われました。
     以下、Q&A方式で主要な改正ポイントを整理してみます。

   
1 基礎控除
      相続税の基礎控除は、どのようになりましたか。
     
      物価や地価が現在と同等であった頃に適用されていた水準と同等となるように再設定し
      従来の水準の60%に改定することとされました(図表1)。
       この改正は、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税
      について、適用されます。

    
2 相続税の税率
      相続税の税率構造は、どのように見直されましたか。

      最高税率が55%に引き上げられるとともに、税率の区分が従来の6段階から8段階に
      なりました(図表2)。
       この改正は、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税
      について、適用されます。

    3 小規模宅地等の特例
      相続税の基礎控除が引き下げられた反面、負担軽減策として小規模宅地等の特例の適用
      範囲が見直されたようですが、その内容を教えてください。

      (1)適用対象面積の拡充
         特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積の上限を拡充し、かつ、特例の対象と
        して選択する宅地等のすべてが、特定事業用宅地等および特定居住用宅地等である場
        合は、それぞれの適用対象面積まで適用可能となります(図表3)。
         なお、貸付事業用宅地等を選択する場合の適用対象面積の計算は、従来通りです。
         この改正は、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産に係る相
        続税について、適用されます。
       (2)二世帯住宅の取扱い
         一棟の建物で構造上区分のあるものについて、被相続人およびその親族が各独立部
        分に居住していた場合、その親族が相続または遺贈により取得したその敷地の用に供
        されていた宅地等のうち、被相続人およびその親族が居住していた部分に対応する部
        分は、特例の対象となります(図表4)。
         この改正は、平成26年1月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産に係る相
        続税について、適用されます。
       (3)老人ホームの場合
         老人ホームに入居したことにより、被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の
        敷地の用に供されていた宅地等が、次の要件が満たされる場合に限り、相続開始の直
        前において被相続人の居住の用に供されていたものとして、特例が適用できるように
        なります。
       【改正後の要件】
       ① 被相続人に介護が必要なため入所したものであること
       ② その家屋が貸付け等の用途に供されていないこと
         この改正は、平成26年1月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産に係る相
        続税について、適用されます。

    4 相続時精算課税
      相続時精算課税の適用要件と対象者について、どのように改正されましたか。

      若年世代への資産の早期移転を一層促進する観点から、相続時精算課税の適用要件につ
      いて、贈与者および受贈者の対象を拡充しています(図表6)。
       この改正は、平成27年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について、
      適用されます。

図表1 相続税の基礎控除
. 改正前 改正後
定額控除 5,000万円 3,000万円
法定相続人
比例控除
1,000万円に
法定相続人数
を乗じた金額
600万円に法
定相続人数を
乗じた金額
図表2 相続税の速算表
改正前 改正後
法定相続分に
応ずる取得金額
率(%) 控除額(万円) 法定相続分に
応ずる取得金額
率(%) 控除額(万円)
  1,000万円以下 10   1,000万円以下 10
  3,000万円以下 15 50   3,000万円以下 15 50
  5,000万円以下 20 200   5,000万円以下 20 200
     1億円以下 30 700      1億円以下 30 700
     3億円以下 40 1,700      2億円以下 40 1,700
     3億円超  50 4,700      3億円以下 45 2,700
. . .      6億円以下 50 4,200
. . .      6億円超 55 7,200
図表3
改正前 改正後
居住用240㎡・事業用400㎡

限定的な併用→最大400㎡
居住用330㎡・事業用400㎡

完全併用→最大730㎡
図表4
改正前 改正後
二世帯住宅について、住宅内部で互いに行き来
ができない構造の場合は、特例の適用要件であ
る「同居として認められない。
二世帯住宅の構造上の要件を撤廃し、住宅内部
で行き来ができるか否かに関わらず、「同居」と
して認められる。
図表5 改正後の小規模宅地等の特例の適用関係
相続開始の直前における住宅等の利用区分 要 件 限度
面積
減額
割合
に被
供相
さ続
れ人
て等
いの
た事
宅業
地の
等用
貸付事業以外の事業用の宅地等 ①特定事業用宅地等に該当する宅地等 400㎡ 80%








一定の法人に貸し付けられ、その
法人の事業(貸付事業を除く)用
の宅地等
②特定同族会社事業用宅地等に該当す
 る宅地等
400㎡ 80%
③貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200㎡ 50%
一定の法人に貸し付けられ、その
法人の貸付事業用の宅地等
④貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200㎡ 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 ⑤貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200㎡ 50%
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ⑥特定居住用宅地等に該当する宅地等 330㎡ 80%
(注)「貸付事業」とは、「不動産貸付業」「駐車場業」「自転車駐車場業」及び事業と称するに至らない不動産
   の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行う「準事業」をいいます。
図表6 相続時精算課税の適用要件の拡充
. 改正前 改正後
贈与者 65歳以上の父母 60歳以上の父母または祖父母
受贈者 20歳以上の子である推定相続人 20歳以上の子である推定相続人
または20歳以上の孫
       

所長 堀 裕彦 中小企業庁“ちいさな企業

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