事務所便り

2025年 3月号

● 要注意!! 消費税の届出書

 消費税及び地方消費税(以下「消費税等」)は、法人・個人事業者問わず、国内で行った「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」に対して、免税又は非課税とされるものを除き課税される税金です。
 課税対象となる取引は幅広く、取引価額の決定や見込み利益額の算出に当たって、消費税等の額の正確な算定は欠かすことのできない重要な要素です。そして、消費税等の処理に当たっては、課税事業者・免税事業者の選択や、簡易課税制度の選択、適格請求書発行事業者の選択など、税務署に届出することにより適用可能となる制度が多く設けられています。これらの届出書の提出を失念して多額の納税を余儀なくされたり、逆に消費税等の額の還付を受けられなくなったりするトラブルは後を絶ちません。
 今回は、実務上、特に注意を要する消費税等の届出関係の留意事項を見ていきます。

1.課税事業者選択届出書・課税事業者選択不適用届出書
⑴ 課税事業者と免税事業者
 消費税の納税義務者は、原則として、その課税期間の基準期間(法人は前々期・個人事業者は前々年分)の課税売上高が1千万円を超える事業者(課税事業者)です。したがって、その課税期間の基準期間の課税売上高が1千万円以下の事業者は消費税等の納税義務が免除されます(免税事業者)。
⑵ 選択課税事業者とは
 免税事業者が「課税事業者選択届出書」(以下「選択届出書」)を提出した場合、その選択届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後は課税事業者になることができます(選択課税事業者)。
 免税事業者は消費税の還付を受けられませんので、高額な資産を購入することなどを計画している場合に、その資産の購入等を行う課税期間に合わせて免税事業者から選択課税事業者となり、その資産等の課税仕入れに係る消費税等の還付を受けようとすることは、実務上よく見受けられる処理です。
 選択課税事業者は、その後、「課税事業者選択不適用届出書」(以下「不適用届出書」)を提出することにより、選択課税事業者をやめることができます。しかしながら、不適用届出書は、選択課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、提出することができません。【表1】

⑶ 選択課税事業者の注意点
 選択課税事業者になり、購入資産等に係る消費税等の還付を受けたとしても、翌課税期間も課税事業者として継続して消費税等の納付を行うことになりますので、課税事業者の選択にあたっては②課税期間の通算で納税額と還付額を比較するなど、慎重な検討が必要です。
 更に、選択課税事業者になった課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始した課税期間において、棚卸資産以外の資産で税抜価額が100万円以上の資産(以下「調整対象固定資産」)を課税仕入れした場合は、その課税仕入れをした課税期間の初日から原則として3年間は、免税事業者になることも簡易課税制度の適用を受けることもできません。【表2】
 表2の事例において、令和6年5月1日に調整対象固定資産を取得した場合、令和6年12月期から3年間は免税事業者に戻れず、結果として令和8年12月期まで課税事業者として消費税等の納税を継続することになります。

2.消費税簡易課税制度選択届出書
⑴ 簡易課税制度とは
 基準期間の課税売上高が5千万円以下の事業者は、課税売上に係る消費税額に、業種区分に応じた「みなし仕入れ率」(40%~90%)を乗じて仕入控除税額を算出する簡易課税制度を適用することができます。
 この制度の適用を受けるためには、原則として適用を受けようとする課税期間が開始する日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」(以下「簡易課税届出書」)を提出する必要があります。そして簡易課税制度を選択した場合、2年間は継続して適用しなければなりません。
⑵ 簡易課税制度の注意点
 簡易課税届出書を提出している場合であっても、基準期間の課税売上高が5千万円を超える場合には、その課税期間については簡易課税制度を適用することができません。ただし、その場合でも、当初提出した簡易課税制度の効力は失われず、鬼呪機関の課税売上高が5千万円以下になった課税期間については、再び簡易課税制度を適用しなければなりません。
 このことを失念し、簡易課税届出書の提出後、課税売上高が5千万円を超え一般課税を適用していた事業者が、基準期間の課税売上だが5千万円以下となった課税期間について一般課税により消費税等の還付を受けたところ、税務署から簡易課税届出書が提出されていることを指摘され、多額の追徴課税を受けた事例も発生しています。
 特に経理担当者が交代した場合などは、このようなトラブルが起きる可能性があるので、十分な注意が必要です。

3.まとめ
 消費税等の各種届出は提出の可否を事前に十分検討するとともに、いったん提出した届出書は的確に管理する体制を整えることが、トラブルの未然防止に有効です。

       

所長 堀 裕彦 中小企業庁“ちいさな企業

税務・会計の無料相談はこちら

※どんな些細なことでもご相談ください。

  • 事務所便り
  • 雑学ノート
  • 講演・執筆活動
  • セミナー案内
  • 所長のフォトブログ
  • Facebook
中小企業庁 経営革新等支援機関 “経営サポート
中小企業庁 “ちいさな企業”未来会議サポーター をしております。
第1期 登録アドバイザー